秘密の地図を描こう
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ジプリールがいるのは、おそらく、月面の地球軍の基地だろう。しかし、元々月は地球軍の拠点だった。基地も無数にある。
「……どこだろうね」
とりあえず、調べた地球軍の基地の場所をモニターに表示させながら、キラは呟く。
「しらみつぶしにするわけにはいきませんしね」
最初に当たればいい。そうでなければ、さらに潜伏されるだけだ。
「基地にいるとは限らないし」
戦艦で潜伏されていたら、見つけ出すのは難しい。キラはそう続ける。
「おびき出せればいいのでしょうが……」
それはそれで難しい。ニコルはそう言う。
「そうだね」
確かにそれは否定できない。
「と言うことで、地道にハッキングかな? セキュリティを一部乗っ取ってしまえばいいし」
ジプリールがいるかどうかを確認するだけならば、とキラは笑う。
「そうですね」
努力しなければ意味がない。そういうと、ニコルもうなずいてみせる。
「後は、あの建造物だけど……」
「それなんですが……マードックさんと検討したんですけど、あれだけでは意味がないと思うんですよ」
あれはただの収束器ではないか。そういう結論に達したのだ。ニコルはそう言う。
「どこかに本体が別にあるってことかな」
「おそらく、ですが」
それがジプリールの切り札なのではないか。
「……ジプリールも、そこにいるのかな?」
キラはそう呟く。
「それとも、別の場所で見ているのか」
アラスカでの時のように、と続けた。
「どちらにしろ、近くにはいると思いますよ」
あの手の人間は、自分の目で見なければ気が済まないだろう。もちろん、自分は安全な場所で、だ。
「どちらにしろ、嫌いなタイプです」
たたきつぶしてあげましょう、とニコルは笑う。
「それはともかく、早めに確保すれば、ブルーコスモスもおとなしくなるよね」
捕まえた後のことを考えれば怖いが、とキラは心の中で呟く。カガリはもちろん、ラクスもギルバートも徹底的に追求するつもりらしい。その上、ニコルとは……公式の場でやられないだけマシなのだろうか。
「それは間違いないと思います」
キラの言葉に、ニコルもうなずいてみせる。
「と言うことで、がんばろうか」
言葉とともに意識をモニターに戻す。
「僕たちの役目ですからね」
ニコルも同様だ。
「システム自体は難しくないと思うんです。問題は、相手に悟られないかどうかです」
「それは大丈夫じゃないかな? ばれたことないし」
似たようなウィルスを送りつけたことがあるが、未だにばれていないから……とキラは言う。
「キラさん……」
「メールをチェックするタイプなんだけどね……それには引っかからないんだ」
別の名前を暗号代わりにつかっているのかもしれない。そういえば、彼はため息をつく。
「いつの間に」
「三年前だよ」
前の戦いの時、とキラは言う。あの頃はなりふり変わっていられなかったから、と続けた。
「そうですか」
それで彼は納得したらしい。
「なら、大丈夫ですね」
後はウィルスを送りつけるだけか。彼はそう言ってうなずく。
「まぁ、これが無駄になってくれればいいのですけど」
「そうだね」
もっと早くに見つかってくれればいい。そう思いながら、キラはキーボードを叩いていた。